対策を終えて
以上が、当院のコロナワクチン対策ですが、連休返上で500枚以上のチケットを延々と印刷しながら、ここまで書き上げたところで、高校生の娘がぽつりと言いました。
「私、開業医にだけはなりたくない。だってこんなことまでしないといけないの?」
なかなか手厳しい一言ですが、改めて気づかされたのは、今回のワクチン接種では、私のような開業医は限られた人員で、日常診療や発熱外来と並行して、上記のようなチケットセンター的な役割から薬の卸売り的な業務云々までをこなさなければならない、という現実でした。
今年はじめ、診療所として、新型コロナワクチン接種という一大国家プロジェクトに少しでも協力できれば、といった気持ちで多くの先生方が自院でのワクチン接種に名乗りをあげたのではないかと思います。私もそんな一人でした。
確かに他のワクチンと違い、「ディープフリーザー」といった超低温冷凍庫での保存など、扱いは容易ではなさそうだということはわかってはいましたが、徐々に明らかになってきたのは、ワクチンの取り扱いの煩雑さではなく、ワクチン接種を取り巻く医業以外の作業の複雑さでした。
そしてチケットセンター以上に私を苦しめているのが、それぞれが独立して乱立する多くのシステム達です。
私がコロナをめぐるシステムの中で初めて出会ったのは、「HER-sys」や「G-mis」でした。これは、PCR検査数や備品の在庫管理、コロナ陽性患者の届け出に係るシステムでしたが、初期のころ、入力が思ったようにはいかず、パソコンと格闘する日々でした。そこへ、またも、どこからか彗星のごとく現れたのが「V-sys」で、これはワクチンの供給や、実施状況の報告等に利用する新たな「sys(シス)」の登場でした。
もう、新たな「sys」はないだろうと気を許したのも束の間、今度は「VRS」という接種者読み取りの新システムがタブレットに形を変えて配布され、遂には「全県共通予約システム」なる最終型「sys」まで、次から次へと間髪入れずに送られてくるシステム達に、もはやそれぞれがどういった意味合いでどんな立ち位置なのか、完全に混乱しています。きっと私のようにパソコンを少々たしなむ程度の先生方にとっては、「ワクチンを正しく理解して接種し、もしもの時には副作用に対処する」といった医業以外のところで、ワクチン接種に戸惑いを感じているのではないでしょうか。